伊藤 祐子

「インターンシップ 6ヶ月を振り返って」


2005年6月6日

最初は、分からないことだらけだった。週例会議に出ても分からない単語、地名が多くて現場の状況をイメージすることが難しかった。相談のときは、自分だったらどうするだろう、といつも考えていたけれど、どうすべきか全然思い浮かばずこれからのインターン活動を考えて不安になっていた。それでも、色んな現場からの報告を聞き、スタッフの方がどういう事を活動しているか知ることは楽しかった。アドミンの補佐を最初に出来たことも私にとっては、すごく勉強になることだった。後からあの1ヶ月にやったことはスタッフなら全員できることで本当に一部のことしか手伝えてなかったことが分かるわけだが、それでも会計のことが少しは理解できたし、ナイロビ事務所からの現場に対する視点の重要性も感じられたし、海外で組織が活動することの大変さも知ることが出来た。事業を担当している人はドナーからの資金のやりくりも考えながらすすめていることも知った。お金や情報がきちんと管理されているあの空間。あそこがあるから現場での活動もよいものが出来るのだろうなと想像しながら過ごしていた。あの1ヶ月がなかったら私はNGOの活動について点でしかものを見られなかったのではないかと思う。

最初の現場は、施設拡充事業だった。本当に見るだけだったが、学校によって保護者の雰囲気や保護者-校長の関係が全く違っており「地域の多様性」を言葉ではなく実感として知ることが出来た。また、自分が観察して感じたことをスタッフに話したときに、「ここは、すごく変わりました。はじめの頃は…」という話を聞き、本当に人や、人の関係というものは変わっていくものなんだ、ということを知ることが出来、非常に興味深かった。この事業にずっと関わってきてその変化を見てきたスタッフを羨ましく感じ、その変化をもたらしたCanDoの事業を素晴らしいと思い、地域の人の意欲と能力をすごいと感心した。そして、自分もそういう良い変化をもたらせられるような活動をしたいと思うと同時に、では現場で自分は何が出来るのか、と考え始めた時期でもあった。

保健事業でTBAトレーニング、保健グループへの道具貸し出し、TBA基礎保健トレーニングの同行・調整を手伝わせてもらった時には、現地の役人と一緒に活動することの難しさを感じることが出来た。私は、TBAトレーニングは問題が落ち着いた後の最後の週から入ったのでスタッフの方々の苦労は実際には理解できていないのだろうと思う。それでも、県の講師に言うべきことはきちんと言う調整員の姿やローカルスタッフに対する接し方は印象的で、自分が現場に入ったとき本当にいいお手本になった。また、トレーニングやワークショップを組み立てるときに何を、誰との関係を優先するのかを考えること、起こり得る多くの可能性を考慮して準備しなければならないことなどを学ぶことが出来た。しかし実際は、満井さんが一時帰国していたときに、自分が準備をすすめる事で手一杯になり、周囲のことに目を向けられなくなっていたことや小さな事を現場で決めてしまったことがあり、それを注意されたことが多々あった。頭で分かっているだけでは駄目で、それを実行できるようにならなければいけないということもこの時痛感した。
TBA基礎保健トレーニングのときには、トレーニングで目指すことを踏まえた上で専門家とどういう組み立てをするか話し合う。実際にトレーニングが始まってみると、計画どおりにすすめられないことも多く根本の何を目指すかというところを忘れてしまっていた瞬間もあった。TBAと話をしているうちに情が移りそうになり、言うべきことを言うのに時間がかかり外部者として関わることの難しさを知った。反省すべき点ばかり残ったトレーニングになってしまったと思う一方で、参加者の能力向上には目を見張るものがあった。TBAトレーニングでは、専門家に聞かれても答えられなかった質問が、基礎保健トレーニングのときに復習として再度質問していたときにほぼ正確に答えていた。知識だけでなく参加者の役割についてきちんと考え理解している答えも聞くことが出来た。グループワーク中にリーダーシップをとる人も何人かでてきていたし、発表の仕方も以前より良くなっていた。トレーニング自体に慣れてきたということもあるだろうが、その変化に私は本当に驚き感銘を受けたことを覚えている。
TBAトレーニングは、選出・村のサポート・トレーニングと本当に時間をかけて慎重に行われてきたプロジェクトで私はそのほんの一部にしか関わっていなかったけれど、その積み重ねがこういう結果として出ることを見ることが出来て本当に嬉しく、いい刺激になった。一緒に活動したスタッフ・ローカルスタッフの方にはこのトレーニングを通して本当に多くのアドバイスをいただいた。その中で私の考えや方法も尊重してくださった。そういうトレーニングを遂行することだけではなくインターンに対する姿勢や一緒に活動をする人との関係作りについても私は多くのことを学べたと思う。私も、自分のやり方を見つけた上で柔軟に人の意見に耳を傾けられるようになりたいと思った。

ECD保健トレーニング上級編では、何を目指すかというところから考える必要があり、そのときにはナイロビ事務所のスタッフ全員に意見を聞き情報を教えてもらいローカルスタッフとの情報共有に関しても助けてもらいながらすすめていった。そういう情報を実際のトレーニングで活かすことが出来たときに、事業は本当につながっているものなんだな、と実感できた。そして次につながるように情報を収集することも大切なのだと思った。地域の中のつながり、地域と事業のつながり、事業間のつながり、事業の中のつながり、そして事務所と現場のつながり、あらゆる方面でのつながりがあってそれを大切にし、うまく活かすことがより効果的な活動に結びつくことを知ることができた。

私は、6ヶ月間に多くのことを見ることが出来、学ぶことが出来たと思う。ただ、それらを活かせるかどうかは自分次第だということを何度も感じた。いろんな事業を見ることは時として自分の能力と知識と柔軟性の無さを痛感することであった。でも、だからこそ自分に何が必要なのか、周囲のあらゆる面でのサポートがどれだけ重要であるか、ということが分かった。ここに来ていなかったら分からなかったことが本当に多かった。国のことも、地域のことも、そこに住む人々のことも、NGOの活動のことも、自分のことも。
最初のほうに書いた、「自分は何が出来るのか」という答えはまだ見つけられていない。現場で地域の人に対して、私は何が出来たのだろうと今も考えている。インターンのオリエンテーションで最初に話された「双方向性ある関係」はできていたのだろうか。助けてもらってばかりだったように思う。

ケニア人スタッフ、専門家の方には、私のつたない英語での会話にもきちんと対応して、一緒に考えてくださったことに本当に感謝します。東京事務所のみなさんにも渡航や保険その他あらゆる面で大変お世話になりました。そして、6ヶ月間喜怒哀楽を共に過ごし(?)サポートしてくださったナイロビ事務所のスタッフ・インターンの方には頭があがりません。この6ヶ月インターンという貴重な機会を与えてくださったことに改めて感謝いたします。ありがとうございました。