■幼児育成事業■

●幼児育成をめぐる現状
 CanDoが実施した保健調査から、事業地であるムインギ県ムイ郡では、5歳未満の子どもたちの多くが栄養不良であることが分かりました。また、生活環境や習慣に起因する様々な慢性的病気を抱えていました。この地域には、看護士が1名ずつ配置されている小さな2つの診療所があるだけでした。これらの施設では病気の治療が中心で、乳幼児の健康を守るための予防的な取り組みは、最近予防接種が行なわれるようになっただけで、母子保健に関する包括的な活動はありません。また、いくつかの開発協力団体が、村レベルで保健ボランティアのグループ形成を試みましたが、成功していません。

 一方、幼児に対する教育の面を見てみると、小学校就学前の子どもたちが関わる施設として、幼稚園があります。ムイ郡ではほとんどの幼稚園が小学校に併設され、3歳から6歳、場合によっては家庭の都合で10歳ぐらいまでの子どもが通っています。  現在、地域の人々や小学校教員は、幼稚園の管轄が教育省であるためか、子どもたちが小学校へ入学する準備としてアルファベットや数字、勉強する態度が身につくよう教育することを幼稚園に期待しています。しかし、子どもの健康が全般的に厳しい状況にあるにもかかわらず、向けられる関心は十分ではありません。

●教育と保健のバランスが取れた幼児育成を
 以上のような現状から、教育と並行して、幼稚園が子どもの健康を守り増進させるための仕組みを持つことが重要であると、CanDoでは考えています。そのためには、幼稚園の教員が、保健に関する全般的な知識や技術を深め、日常の幼稚園活動に反映しなければなりません。基礎知識・技術が教員から保護者に伝えられること、それによって幼稚園の役割について地域社会の認識が深まり、幼稚園活動への理解や協力が得られるようになることが重要だと考えています。このように幼稚園を拠点として、教育と保健のバランスが取れた幼児育成活動が形成されるには、教育省と保健省という縦割りの行政機関だけでは難しいようです。そこで、CanDoのように教育と保健の両方で事業展開するNGOの協力する意味が出てきます。

 具体的な協力として、CanDoでは、ムイ郡の全幼稚園に対し、2003年に参考図書を配布しました。また、上で紹介した母親対象基礎保健トレーニングを、幼稚園の先生対象にも実施しました。その中で「状況を具体的に改善していくためには、地域の理解・協力が欠かせない」という指摘が出てきたことを受け、地域の幼児教育に携わる関係者に集まってもらう会議も開きました。この会議では、幼児育成の意義や、幼稚園とその先生の役割、地域からの協力の重要性などについて話し合いました。今後は、幼児育成に関するより専門性の高い内容の、上級編保健トレーニングを実施していく予定です。