エイズ学習会

●2004年の調査から開始
2004年にムインギ県(現、ムインギ東県)ヌー郡で行なった学校における保健教育のニーズを探る調査で、「誰でも、身近な人のエイズ死を体験している」という状況から想定した以上に危機感が大きく、エイズに関する活動のニーズがあることがわかりました。

「不道徳な性交渉の結果」「伝統呪術による病『ウォンゼ』だ」といった誤った認識や、「コンドームではエイズは予防できない」など情報の混乱がありました。

正確な情報を提供し、疑問に答える機会を作る必要があると考え、「エイズについて知る」取り組みとして、
その年、教員、保護者、それ以外の地域住民を対象として、小学校でのエイズ学習会の実施を開始。2005年にムイ郡、2007年にグニ郡でも行なうことにしました。

エイズ・トレーニング
エイズ学習会は、住民からの申請での実施に意味があると考え、2005年にムイ郡で取り組むにあたり、学習会の開催を促すために、トレーニングを行ないました。対象は、基礎保健トレーニングの修了者、伝統助産婦(TBA)、幼稚園教師で、知識の習得に加えて、地域でエイズについてどのように話し合っていくかを考えることを目的としています。

地域住民が学習会に参加するよう説得できる存在が重要ということから、2007年から地域リーダーを対象としたトレーニングを行なっています。

エイズ公開学習会
地域リーダーである村長老のトレーニング実施により、申請は増えてきたのですが、性に関する話への躊躇などから、住民の合意が難しい事例がわかり、CanDoが村を訪問して「公開学習会」を2008年にグニ郡の一準区
(区より小さい単位)で始めました。2009年は、ヌー郡、ムイ郡、グニ郡において、48回実施。

最初に、郡、区レベルの行政官との合意形成をし、次に準区レベルの助役との共催で、村長老のエイズ・トレーニングと「地域の健康のための戦略会議」を開きます。村長老の協力により、村を訪問。集まった住民との「情報に基づ合意」の形成に配慮しながら、住民が自主的に参加する学習会を開催します。

参加者には、現地で使われているカンバ語
(ケニアでは英語が公用語、スワヒリ語が国語)の教材「エイズの基礎情報」を配布。導入の話から始まり、「背景情報」「HIVとエイズの特徴」「日常生活とHIV感染経路」の講義、「日常生活の中での感染予防」とコンドーム実習、そして「エイズ発症を遅らせる方法」「前向きな生き方」「子どもの感染リスク」の講義、グループ・ワークでの議論という3時間のプログラムです。

「HIV感染経路」では、性交渉や母子感染、患者の介護のほか、針やナイフ、男子割礼や女性性器切除の際の刃物の共有、埋葬、出産介助などのリスクがあります。

学習会では、HIV感染予防に効果があるコンドームについては、参加者の考えや、会場の雰囲気によって受け入れ方が異なるので、口頭の説明のみにするか、コンドームとペニスモデルを用いた実演にするか、されに参加者も実技練習するか、現場で慎重に判断します。
2010年11月