ケニアの計画停電 (2000年9月・第12号より)

降雨量不足で水力発電に影響が出て最高で11時間の停電

6月にケニアへ出張する直前になり、ケニアでは「計画停電」が開始された。発電量が消費量に追いつかないので、曜日と時間帯を決めて配電の制限をする、言わば給水制限に似た措置である。水力が電力の重要な供給源であるケニアでは、昨年から続く降雨量不足で各地のダムの水位が降下しているため、放水を伴う発電を制限する必要が出てきた、というのが政府と電力会社の説明だ。当初は長くても毎日6時間程度の停電であったのが、その後の変更で、最高で11時間の停電が毎日続いている。 この計画停電により、CanDoナイロビ事務所の業務に対して大きな影響が出ている。プリンタやファックスは使えない、文書作成やEメールはコンピュータのバッテリが続く数時間のみ可能、という状態で、大部分の事務作業は確実に電気のある真夜中に進めるよりほかない。また、夕食は準備から後片付けまでロウソクの灯となるので、生活のほうも落ち着かない。いかに現代人が電力に頼って暮らしているのか、思い知らされる毎日である。

打撃をうける都市部のビジネス街とほとんど変化のないヌーの生活
首都ナイロビをはじめ都市部のビジネス街や工業地帯は、停電により打撃を受け、経済への影響のほどが懸念されている。至るところで発電機を使用して苦境を乗り越えようとしているが、ガソリンや灯油の値上げも起こる。それに伴い乗合バスも値上げするなど、庶民の生活にもさまざまな影響が出ている。
ある日、計画とは無関係の停電によりケニア全土が一晩中暗闇に包まれた。現在、電力の一部を輸入している隣国ウガンダ側のトラブルにより送電が突如停止したのが原因だった。各地の送電網が連鎖反応で麻痺してしまったのだ。日本で万一同じことが起きたら、と想像するだけで恐ろしくなる。
1997年の暮れにエル・ニーニョ現象による大雨で全国的な混乱が生じたが、今回はそれに匹敵するとみる声は少なくない。例年10月頃から始まる雨季にまとまった雨が降れば間もなく正常に戻る、という予測が一部にあるが、楽観視はできない。
そんな中普段から電力の恩恵を受けていないヌー郡やムイ郡の暮らしには変わった様子はない。私たちが忘れている生活の原点を、見せてくれているように思えてならない。





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