「学費に及ぼす、今後の選挙の影響」 (2002年5月・会報第19号より)

ケニアでは、公立小学校教員は原則として政府派遣だ。学ぶのに必要な費用のうち、給料は政府負担だが、それ以外は全て保護者負担。

例えば、政府派遣の教員数が不充分な場合に学校の裁量で雇われる教員の給料。教室建設にかかる費用(開発基金)。教科書購入、毎学期実施される模擬試験、給食、学校警備員、球技大会などの行事参加に必要な負担金…。毎年1月には、各小学校で校長と保護者が、これらの総額と、保護者ごとの分担額(学費)を決める。

この学費が、今年は開発基金を除いて無料になる。「学校は保護者からお金を徴収するな」という通達が政府から出された。

 この通達は、年末に予定されている大統領選挙および国会議員・地方議員の総選挙に関係しているのか。学費を支払えないために毎年多くの生徒が学校から送り返され、授業を受けられないケニア。通達を喜んだ保護者が与党候補者に投票、という読みなのだろうか。

しかし、学費のなかには、その徴収ができないと、学校運営が行き詰るか、活動の質の低下につながる費目も多く含まれる。

一方、学校運営に必要なお金を政府が出すという話は聞かない。ナイロビの学校の中には、暫定的な措置として一定額を学校へ支払うという申し出が保護者から出されたところも多いと聞く。

通達の影響は、事業地ヌー、ムイ郡でも見られる。例えば、今年は入学者が増えて困っていると言う校長もいる。子どもを学校に通わせていない親も、学費が無料なら通わせたいと思っているようだ。また、学校行事の予定が郡教育官から発表されていない。当会の活動計画を立てる際には、行事と重ならないように配慮しているのだが、不透明で手も足も出ない状態だ。

選挙に関連して、ケニアの教育の現状や将来との整合性が乏しい短絡的な教育政策が持ち込まれ、現場で混乱しているようにみえる。しかし、混乱は新たな機会でもある。保護者と学校との新たな関係につながることや、無料で質の高い小学校教育の重要性が認知される機会になるかもしれない。





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