小学校の無償教育政策 (2003年12月・会報第25号より)

ケニアは、1963年の独立以来、公的な学校教育を重視する政策をとりつづけています。国家財政が限られている中で公教育を推進する方法として、小学校の形成および運営に関して、保護者を中心とする地域社会の参加・協力を得てきました。
地域社会が資金と労働力を拠出して小学校を建設し、教育備品を揃えれば、有資格教員を公務員として派遣する制度です。教員への給与は国が支給するため、小学校の授業料は無料です。しかし、昨年までのモイ政権では、学校の守衛や給食調理スタッフの給与、チョークなどの教育消耗品、試験料、会議費や課外活動参加費などの運営経費を、保護者は小学校へ支払う必要がありました。教室の増設に必要な開発基金も同様です。
また、小学校の運営主体は、保護者と地域社会の代表者から構成される学校委員会で、教員からは校長のみが議決権のない書記役として参加していました。

昨年末に発足したキバキ政権は、小学校の無償教育政策を強く打ち出し、保護者は運営経費を払う必要がなく、校長は保護者からお金を徴収してはならない、としました。そうしたところ、通常の新入生ばかりでなく、これまで適齢時に就学しなかった年齢が上の子どもたちも、大挙して入学する現象が全国でみられました。このことから、保護者が教育の意義について無理解なのではなく、金銭的な負担が子どもを小学校へ行かせることを妨げていたことがわかります。

本年度については、世界銀行やイギリスより、これまでにない潤沢な資金をえて、新政権は、教科書・教材購入費と運営経費にあてる資金を全国の小学校へ供与することができました。しかし、運営経費が毎年確保できるか、ということは不確実です。さらに、教室や施設の拡充のための資金については、政府が十分に確保することは難しいと思われます。

一方、保護者には、これまでさまざまな形で負っていた小学校運営の責任から解放された、と理解する雰囲気や過大な期待が根強くあるようです。これからの小学校教育において、政府と保護者・地域社会との新たな役割分担についての合意形成が必要と思われます。





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