環境保全活動の出発点
代表理事 永岡 宏昌
(1998年10月・会報第4号より)

ムインギ県ヌー郡でどのように活動展開をすると地域の総合的な開発により貢献できるかはCanDoの大きな関心です。7月半ばから1か月半にわたって出張し、ケニアに駐在するスタッフと共に、教育支援の充実、環境保全活動、そして地域保健活動の実施可能性について検討しました。今回は環境保全活動について紹介したいと思います。

 人々が生活の基盤を農業ばかりでなく牧畜にも大きく依存しているヌー郡は、降雨量が少なく年毎のばらつきが大きい農耕の限界地といえる地域です。そして、度重なる干ばつの影響を受け、「干ばつ復興地域」に指定されています。多くの場所で、表土流出など深刻な環境の劣化が進み、原因として焼畑による移動農耕、家畜の過放牧、地域の人口の増加などがいわれています。

この分野に関わる行政担当者は、水源保護の観点から山間部での焼畑の制限、燃料用の薪の消費を減らすための改良カマドの普及、荒廃地の植生を回復するための閉鎖地の指定と土壌保全のために水平に溝を掘る作業などを住民に働きかけています。

しかし、大多数の住民たちは積極的に反応していないようです。住民や村の知識人といえる学校の先生に聞くと、「ヌー郡は樹木が豊富で、環境問題はない」という反応が返ってきます。改良カマドは、人口約4万人のヌー郡内で、この3年間に48基が設置されただけです。現在のところ、ほとんどの農家が、薪を家もしくは耕作地の周辺で手に入れることができます。遠くまで出かけたり、現金で購入する必要がないことから、改良カマドの普及に熱心でないのでしょう。生活感覚からは環境問題をとらえられないと思われます。

また、ほかの理由として、10年以上前の復興事業の経験があるようです。ある国際機関の働きかけにこたえて、住民が労働作業をする形で大規模な荒廃地の復興事業を行なったにもかかわらず、土壌流失を防ぐことができず、荒れ地として放置されているのです。この失敗が住民の環境保全に関する考え方に影響を与えているのかもしれません。

 このように現在進行している環境問題について、行政担当者の捉え方と、その地域に暮らす人たちによる問題の捉え方に、大きな落差があります。これを埋めることがCanDoの活動の出発点になるのかもしれません。


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