「スラム奨学金支援から補習授業へ」
代表理事 永岡 宏昌
(2000年9月・会報第12号より)

終了が近い奨学金支援にはスラムの問題に取り組む事前調査の側面も
就業機会が限られ生活環境も厳しいナイロビのスラムへ、村落部から多くの人々の流入が続く事実をどうとらえるか−スラムの貧困の背景には更に村落部の貧困があると考えました。そして、当会はこの問題に取組むために、東部州ムインギ県ヌー郡・ムイ郡で地域住民を主体とした総合開発事業を始めました。一方、平行して都市スラムでもこの問題にも向かうことによって、初めてケニアの貧困問題に包括的に関わることができます。ナイロビのスラムからケニア各地に進学した高校生への奨学金支援は、そのような意味も込めて実施しました。

これを、将来スラムでの本格的な事業展開をするための人間関係作りや事前調査としての側面も意図しながら進めてきました。奨学金事業は、昨年度の奨学生11名の卒業につづき、本年度、11人が卒業して終了する予定となりました。しかし、当会の実力を考えると、現時点で、スラムの事業を本格的に展開するには無理があります。

補習事業で、細いながらも事業展開につながる地域社会との関係作りを
奨学金支援とともに、休暇でスラムに戻ってきた奨学生を対象に補習授業を実施してきました。最後となるこの8月に、スラムに暮らす高校3・4年生一般に対象を拡大したところ、多くの参加希望があり、受け入れた高校生は積極的に学びました。この補習授業の意味は、理科や数学といった苦手科目の復習ばかりでありません。住居が狭くて暗く、勉強できる環境がない生徒に、学習する空間を提供すること。さまざまな高校に通う学生の交流・協力や教科以外の知的刺激の場を提供すること。とかく「誘惑の多い」スラムのなかで問題行動を予防する場として機能することなど、さまざまな役割を意図して実施しています。教員としてケニア人教師のほか、ケニアで教鞭をとる青年海外協力隊々員の協力も得ています。

今後は、参加する高校生を年3回の休暇期間ごとにスラム内で募集して、補習授業を実施する予定です。意味のあるものになるには、高校生が補習授業にニーズを感じて自主的に参加することとともに、保護者の理解と支援が必要です。その意味では、地域社会との関係づくりを細いながらも発展させることができ、スラムでの事業展開につながるできると思われます。


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