「動機づけを内在化する」
代表理事 永岡 宏昌
(2000年12月・会報第13号より)

当会は、ヌー郡・ムイ郡において、住民参加による地域の総合開発に協力するため、導入事業として小学校教育への協力を行なってきました。まず、全小学校へ教科書の供与を行ない、いくつかの小学校では顕著な成績向上がみられました。しかし、地域全体をみると、必ずしも顕著な成果は上がりませんでした。このことは、当会と教育担当官・教員は、地域の教育問題を更に踏み込んで話し合う機会を提供することになりました。ヌー郡の教員の多くは、専門的なトレーニングを受けて教員資格を持っています。教科書不足が解消されても成績が向上しないのは、教員の教授意欲(やる気)が低いことが問題である、との共通理解にいたりました。以来、教員トレーニング・環境ワークショップ・環境モデル事業など小学校と関係する事業において、教員の意欲を高めるための「動機づけ」の側面を重視しながら実施しています。

この動機づけは、「外因によるもの」と「内在化されたもの」とに二分して考えています。「外因」とは、褒賞・称賛・認知・支援・処罰など外部からの要因を受けて、教員が教授意欲を高めるよう誘導するものです。例えば、成績のよい学校や担当教員を表彰したり、その教員へ褒賞を与えるなどが、ケニアでよくみられる動機づけの方法です。一方、「内在化」とは、教員自身の職業倫理・意欲・問題意識・使命感・楽しみなど内的な理由を持つことによって「内発的」に教授意欲が高い状態を想定しています。

外部者である当会が、実施事業を通じて教員の動機づけに寄与するには、まずは、「外因」による動機づけの形成になります。けれども、重要なのは、教員がその動機を「内在化」できるように配慮することです。

例えば、環境活動・教育では、教員が具体的な環境活動に取組めるよう資材や技術などを支援することによって「外因による動機づけ」とします。環境活動と教科教育との新たな関連付け・創意工夫を促すことによって教員の知的刺激となること。学校菜園や苗畑・植林活動など教室を離れた形での子どもたちの新たな学習環境を紹介すること。近隣の学校の教員との新たな知的交流の場となること。それらを配慮することによって、教員が「内在化された動機付け」を形成して教授意欲の向上につながることを期待しています。また、この「外因」と「内在化」の関係は、住民参加型の村落開発全般についてもあてはまることかもしれません。


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