「教育と保健のバランスがとれた幼児育成」
代表理事 永岡 宏昌
(2001年12月・会報第17号より)

当会の事業地であるムインギ県ムイ郡で、5歳未満の子どもたちの健康状態を調査したところ、多くの子どもたちが栄養不良でした。また、生活環境や習慣に起因するさまざまな慢性的な病気を抱えていました。

この地域には、看護士が1名ずつ配置されている小さな2つの診療所があるだけです。これらの施設では病気の治療が中心で、乳幼児の健康を守るための予防的な取組みは、最近予防接種が行われるようになっただけで、母子保健に関する包括的な活動はありません。また、いくつかの開発協力団体が、村レベルで保健ボランティアのグループ形成を試みましたが、成功していません。

一方、幼児に対する教育の面を見てみると、小学校就学前の子どもたちが関わる施設として、幼稚園があります。ムイ郡においては、ほとんどの幼稚園が小学校に併設され、3歳から6歳、場合によっては家庭の都合で10歳くらいまでの子どもが通っています。

現在、地域の人々や小学校教員は、幼稚園の管轄が教育省であるためか、子どもたちが小学校へ入学する準備としてアルファベットや数字、勉強する態度が身につくよう教育することを幼稚園に期待しています。しかし、子どもの健康が、全般的に厳しい状況にあるにもかかわらず、向けられる関心は十分でありません。そのことから、教育と並行して、幼稚園が子どもの健康を守り増進させるための仕組みを持つことが重要である、と考えます。

そのためには、幼稚園の教員が、保健に関する全般的な知識や技術を深め、日常の幼稚園活動に反映しなければなりません。基礎知識・技術が教員から保護者に伝えられること、それによって幼稚園の役割について地域社会の認識が深まることが重要です。このように幼稚園を拠点として、教育と保健のバランスがとれた幼児育成活動が形成されるには、教育省と保健省という縦割りの行政機構だけではむずかしいようです。当会のように教育と保健との両方で事業展開するNGOの協力も必要である、と考えます。

今後を考えるうえで考慮すべきことは、幼稚園教員への支援です。小学校教員と比べて10分の1程度の給与で働いていて、ほとんどの園で異なった年齢の多くの子どもたちをひとりで担当しています。そのため不満が募りやすく、孤立しがちです。教員たちをどのように勇気づけ、動機づけていくかにも取り組むべきだ、と考えています。


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