「まずは、一般女性を対象に基礎保健を」
代表理事 永岡 宏昌
(2002年5月・会報第19号より)

ムイ郡での保健事業を考えるため、地域の保健医療にかかわる人々を3つのグループに分類してみました。第1グループは、公的医療機関である診療所に配置されている少数の看護士および公衆衛生技官。診療所での医療行為、公衆衛生など地域全域にわたって分野を網羅する役割を担う専門家です。

2グループは、伝統的助産婦(TBA)、伝統治療者(TH)、地域保健士(CHW)など、いわば村の中で医療や保健に関する知識や技能に長けた人々です。第3グループは、それぞれの家庭生活のなかで、保健活動を実践していく人々、特に出産適齢年齢の女性が考えられます。

政府の財政難などから、第1グループの充実が難しいムイ郡では、これら3つのグループの相互連関と協力のなかで保健・医療状況を改善していくことが、継続性の点から重要であると考えます。

ケニアでは、NGOなど開発援助機関の多くが、第2グループとなる地域保健士や伝統的助産婦の人材育成に取組んできました。これによって、保健医療の知識や技能・サービスが、第3グループを通じて地域社会全般へ波及することや、地域住民の保健活動の

グループ化が促進される、との前提のようです。しかし、現実には地域社会への波及が進んでいないと見られます。トレーニングを受けた地域保健士などが、その知識・技能を利用して、地域のなかで特権化・個人の利得の拡大をめざす指向が強いため、ともいわれます。

この点から、当会の保健事業は、第3グループである一般の出産適齢期の女性を対象とし、多くの女性が保健医療の基礎的な知識・技能をみにつけるトレーニングを実施しています。これによって、保健医療サービスの受益者としての能力向上、家庭のなかで保健活動の実践、そして、近隣の人々への生活レベルからの波及などを目指します。さらに、トレーニングを終了した女性が、自然な形で、保健活動のためにグループを作ることを期待しています。グループ内から地域保健士や助産婦を目指す人材の発掘と育成につながれば、地域保健医療の向上に大きく寄与するものと思われます。また、このトレーニングに診療所の医療専門家の協力が得られれば、両グループ間の信頼関係の形成にも寄与するものと思われます。


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