「環境活動を教科と関連づけ、小学校に定着を」
代表理事 永岡 宏昌
(2002年12月・会報第21号より)

ヌー郡での環境保全事業については、当初、住民の直接参加による植林や土壌保全などを目指していました。しかし、1998 、99 年と事業形成のために行なった調査で、住民が環境問題を直截に捉え、環境保全を真の目的とする活動意欲はみられませんでした。植林事業への参加は、短期的な食糧の獲得によって動機づけられていることが明確となりました。そこで、子どもたちが将来、環境保全を担えるように、小学校へ環境活動・教育を導入しました。彼らを通して大人たちが環境意識を高め、地域の環境保全につなげていくことも目的としています。いわば迂回経路を選択したのです。

小学校の環境活動で校長や保護者は、学校菜園を構想すると、「野菜を売る」、育苗・植林では、「材木として高く売れる樹木の植林」など、現金を得て学校経費に充てることに気をとられがちです。しかし定着するには、教育そのもの、特にケニア国家統一初等教育試験の成績へ直接貢献することに、重要な意味があると考えました。教科での教育との関連づけに、中心的な価値を置きました。

モデル事業では、特定の数校と合意して、それぞれ植林・学校菜園・木材加工など活動課題を定めました。当会は技術と資機材の面での支援、および運営上の助言などを集中的に行なってきました。一方で、関連づけのために研究発表会を開催することにしました。理科の特定の課題を、各学年の学習要領に沿って、身の回りのモノを活用しながら、それぞれの学年の子どもたちが実践的に展示・発表する1日の行事です。発表者または参観者として、ヌー郡の全ての小学校の生徒が関わることを目指しました。

モデル事業と研究発表会とを並行して実施することにより、モデル校の教員が、環境活動と理科という教科を関連づけて発想するようになりました。当初の特定の教員による課外活動的なものから変わり、理科に関係する複数の教員が積極的に参加する状況がみられるようになりました。教員には人事異動があるため、個人の並外れた努力だけでは、継続的な活動となることが難しく、多くの人が関わることが大切です。また、共同しての取り組みは、教員相互の刺激となっての教授意欲の向上にもつながると思われます。

この3年間、小学校のなかでの環境活動の定着を図ってきました。さらに、小学校から地域の環境保全に貢献する経路を視野に入れていく段階に、達したと考えています。


ホームへ戻る