「伝統助産婦(TBA)トレーニングの参加者選びに基礎保健トレーニング修了者の協力」
代表理事 永岡 宏昌
(2004年5月・会報第27号より)

2000年からムイ郡で実施してきた母親を対象とした基礎保健トレーニングは、316人が修了して2004年2月に終わりました。「家庭の中で保健活動を実践し、近隣の家庭へ広めてもらう」(会報第19号参照)というこのトレーニングの目的は、ある程度達成できたようです。保健医療事業の次の段階は、地域住民から信頼される村の保健専門家の育成です。トレーニングの中で、ムイ郡の多くの女性がさまざまな危険な出産を体験し、不安を抱えながらも自宅で産み続けている状況が確認されました。2003年から、伝統助産婦(Traditional Birth Attendant)として活動している女性に、ムインギ県保健局の協力を得て、近代保健医療の専門的なトレーニングを実施することにしました。参加者は地域の最小単位である村落から一人ずつ選抜してもらいます。出産介助の技能向上に限定したトレーニングにするのではなく、むしろ産前産後のケアに重点を置き、妊娠中から子どもの成長まで適切に助言できる能力を獲得することを目指します。

まず、参加者の適切な選抜が重要となります。ムイ郡では伝統的な助産は報酬を求めない行為として住民から理解されています。しかし、トレーニングを受けることで、助産が新たな現金収入の機会となると期待する人がいます。助産の経験がない人も参加を希望し、村の有力者が住民の合意がない人を選抜するよう画策するケースもあります。そのような不適切な人材にトレーニングを実施しても、住民が出産介助を依頼しないことになり、いかされません。適切な人材の選抜について、行政官や村のリーダーからの理解と協力が得られるよう話し合いを重ねましたが、不十分と判断せざるをえませんでした。

そこで、基礎保健トレーニング修了者に対して産前産後ケアの意味についての追加トレーニングを実施。それぞれの村で住民の合意で適切な伝統助産婦を選抜できるよう協力をお願いしました。各村で、選抜される伝統助産婦と多くの住民に集まってもらい、当会のスタッフも参加して話し合います。その中で、住民が選抜している事実と、トレーニング参加期間、伝統助産婦に対して住民が行なう支援の内容についての合意を確認します。さらに、後日、トレーニング候補者と当会スタッフが面談し、具体的な助産経験や知識の度合いを聞いて、適切なトレーニング対象であることを確かめます。現在、このような形で適切なトレーニング参加者選びが進んでいるところです(4月末現在、20村で選抜)。


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