「エイズ問題への取り組みについて」
代表理事 永岡 宏昌
(2004年9月・会報第28号より)

エイズの問題は、他のアフリカ諸国と同様に、ケニアにおいても深刻です。成人男女のうち十数人にひとりは、エイズの原因となるヒト免疫不全ウイルス(HIV)を保有している、と報告されています 。

エイズ問題は以前から認識されていたにもかかわらず、ケニア政府がこの問題の対策に積極的に取り組むようになったのは最近のことです。感染の拡大など状況の深刻化は続いていると推測されます。
対応の遅れには、エイズ予防の方策を、禁欲と夫婦間の性交渉に限定して、社会にコンドームが浸透することを阻止しようとする宗教勢力の影響がありました。現在、小学校・高校でのエイズ教育が、道徳面を強調してコンドームについては触れない方針をとっているのも、この流れを受けたもののようです。また、コンドームはエイズの予防には効果がない、という言説も宗教勢力から広範に流布され、正確な問題理解の妨げになっています。

今回、ヌー郡で実施した学校保健の事業形成調査でも、地域の人々がエイズ問題の深刻化を確信し、当会による至急の介入を要望していることが確認されました。
エイズはケニアでも至急かつ集中的な取り組みが必要な課題として注目を集め、外部からの資金が優先的に投入されています。しかし、エイズ予防の面では、住民が問題の所在を正確に理解して、自ら問題解決にむけて行動することが重要な点と思われます。
当会は、エイズ問題への取り組みも他の事業と同様に、この理解し社会として行動する力を向上させることに貢献したいと考えます。また、エイズは地域の人々にとっては、抱えるさまざまな問題群のひとつだと認識しています。
まず、ヌー郡の全小学校を訪問して、各校で教員、保護者および地域住民を対象としたエイズ啓発ワークショップを開催します。エイズに関する基本情報とコンドームを含む予防法を確認した上で、子どもたちに正確な情報を伝えるための教員および地域社会それぞれの役割を検討します。さらに、教員や地域の大人たち自身の課題として、小学校から地域社会へ内発的な行動変容を促がす議論が展開できるよう協力したいと考えています。


ホームへ戻る