あらためて教室建設のもつ意味をみてみる
代表理事 永岡 宏昌
(2005年5月・会報第31号より)

 当会が、ヌー郡・ムイ郡で実施している事業のなかで、地域の人々に最も知られているのが、教室建設でしょう。3月には、住民による建設用の資材運びに、スタディツアーのメンバーが参加しました。この事業とその意味を、あらためて振り返ってみます。

 会報29号の記事に書かれているように、「教室建設・補修にかかわる人たち」の「主」が、保護者である地域住民です。石、砂、焼成レンガなど現地で調達できる資材を全て収集し、建設の単純労働を提供。そして、建設職人の雇用と監督まで責任をもちます。

 当会は、建設マニュアルとセメント、トタン、鉄筋、材木など外部で購入する建設資材を供与。建設専門家を派遣し、頑丈でシンプルな、品質が高い建設となるよう技術指導や助言を行います。壁塗りや塗装など、強度と必要な機能に関係しない工事は行いません。当会の協力がなくても、地域の人々が自分たちで造れる教室のモデルを提示しています。

 そして、2004年からの新たな建設の選択肢として、「1教室プラス1基礎」を作りました。これは、教室の基礎工事と床作業までを隣接する2教室分行って、壁作りからの先の作業は1教室分のみ協力し、2教室目は自分たちで建設資材を購入して造るという進め方です。自助努力を後押しする目的です。

 当会が、この事業の成果として重視するのは、「立派な教室」を完成させることだけではありません。最初に書いたように、地域住民が、単なる労働力、資材・資金の提供者でおわるのではなく、「責任ある事業の実施主体」となることが重要です。

そのために、学校の保護者全体が、事業の流れと仕事量を理解した上で、事業を開始する合意を形成できるよう話し合いを繰り返します。始まると、保護者代表は校長との共同責任者として、資材の出納と在庫の管理、作業スケジュールの管理、当会のマニュアル・技術指導に則った職人の監督などを行います。事業を実施する過程で、地域住民が合意形成や意見の調整、校長・行政官・当会との折衝などの社会的な能力を向上させ、自分たちの立場を強めていくことも、大切な目的です。

 教室建設には村おこしの効果もあるようです。教室が十分でないために、遠くの小学校へ通っている子どもを地元に呼び戻す、それを目指すことが、住民の意欲につながっています。また、職業訓練として、保護者の多くが意欲的に建設技術の習得をしています。


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