平成15年度外務省NGO事業補助金事業報告

事業名称  事業促進支援事業 (プロジェクト評価支援)

対象国及び対象地域  ケニア共和国東部州ムインギ県ヌー郡

補助事業の実施期間  平成15年7月1日〜平成15年12月31日

補助を受けた金額  1,310,136円

補助事業の目的及び内容 詳細 PDF 1.1MB)

(目的)
本申請事業は、当会が1998年度よりヌー郡・ムイ郡において教育・環境保全・保健医療を視野に実施してきた地域総合開発活動の一環として、ヌー郡における小学校教育環境改善事業のうち、主に教員トレーニングと環境活動・教育に焦点を当て、教育環境の最重要要素の一つである教員の教授意欲を切り口に事業評価を行なうものである。評価結果の公表により関係者への説明責任を果たすのみならず、評価事業を事業形成調査としても位置づけ、翌年度以降の事業計画策定につなげていく。また、参加型評価手法の観点から、対象地域の教員及び保護者が直接参加することで、地域の教育環境の現状及びこれまで当会と協働で実施してきた教育環境改善事業に関する地域住民の認識を深めること、さらに本申請事業の終了後、地域住民が主体的に教育環境の改善に取り組んでいく動機付けとなることを目指す。

(内容)
対象地域に、高校教員として豊富な経験を有する教育開発専門家、国際協力に造詣の深い大学教員、及び住民参加による開発協力の実務経験を有するNGO職員を調査者として派遣し、以下のとおり事業評価に取り組む。

1. 評価内容
評価対象事業のうち、教員トレーニングは教員の低意欲という根本的な問題を直接議論する場であるのに対し、環境活動・教育は教員の意欲向上に向けた具体的な機会の創出を目指す取り組みである。また、評価対象事業が上位目標として目指すのは、住民のエンパワメントの達成による持続的な教育環境の改善である。これらの視点から、教員、保護者、そしてその他の観点について、それぞれ以下の項目について評価を行なう。

2. 評価事業の実施方法

(1) 事前の合意形成:対象地域の関係行政官及び学校関係者との合意形成を行なう。
(2) 実施事業の視察:評価対象事業の実施状況を視察する。
(3) 聞き取り:対象地域の行政官、教員、保護者、及び当会職員を対象に、個別インタビュー、及びフォーカス・グループ・インタビューを実施し、情報収集を行なう。
(4) 統計情報、政策文書等の入手:地域内各校の統一試験結果、就学・出席生徒数、施設整備状況など、推移の定量的な把握が可能な情報、及び政策関連資料を収集する。
(5) 事業評価:収集した情報を分析し、対象事業の評価を行なう。
(6) 事業計画の策定:対象地域における今後の協力事業の計画策定に先立つベースラインの設定、実施内容・手法の再検討、及び終了時目標の検討を行なう。
(7) 評価事業報告書の作成

補助事業の成果

本補助事業では、当会が1998年度よりヌー郡・ムイ郡において教育・環境保全・保健医療を視野に実施してきた地域総合開発活動の一環であるとして、ヌー郡における小学校教育環境改善事業(対象28校)のうち、主に教員トレーニングと環境活動・教育に焦点を当てて事業評価を行なった。教育環境の最重要要素の一つである教員の教授意欲を切り口に、評価の手法は、教員、保護者、および教育官からの聞き取りによるケーススタディアプローチに基づく定性的評価を中心とに実施し、これらの事業の実施を通じて教員の教授意欲に、ひいては住民の社会的能力の向上エンパワメントに変化をもたらしたのか、もたらしたとすればどのような変化をもたらしたのかについて検証を試みた。調査にあたり、専門家3名(教育開発;国際開発;住民参加)を対象地域に派遣した。

評価結果の要点は次の通りである。まず、教員トレーニングは、教員の意欲向上について問題提起と解決案策定の教授意欲自体について討議を行ない、教員が意欲の向上について意識を持ち、意欲向上のための場として始めたが、保護者の参加を通じて、保護者の学校教育への参加の重要性も認識され、対話・議論をとおして、広範な学校環境の改善がみられた。そして、環境活動・教育では、教員トレーニングで共有を試みた「教員の内発的な意欲向上」という問題意識を具体化する場として、ケニアの現行の指導要領には含まれず日常的な学校活動とはなっていない環境教育と既存の教科教育を関連づけ、創意工夫を促すことにより、教員と生徒に新たな学習意欲をもたらし、さらに学校内外の教員間の知的交流の場を創出する役割を事業参加校においては果たし、教員の内発的な意欲向上にも影響を与えた。また、住民参加による教室建設・補修が保護者間の結束を強め、教員トレーニング、や環境活動・教育など、複合した他の事業実施が総合的なとの複合効果をもたらし得ることが確認された。

一方、教員と一般の保護者の関係については、今後の課題が明確になった。教員は保護者について、例えば環境活動に関連する技能や知見を提供したり意思決定に参加したりする対等な共同運営者とは見なさず、保護者もその自覚がないことも確認された。この両者の視点の改善には、保護者の多角的な学校教育への参加と、役員ばかりでなく一般保護者の広範な参加が重要であり、このために当会の事業実施にさらなる工夫が必要である。

 この評価結果は、2004年1月から対象地域で実施するJICA草の根技術協力事業「ヌー郡における基礎教育改善事業」の事業計画策定に活用する。これにより効果的な事業へ改善することが可能となる。また、結果を広く社会に公表することにより、説明責任を果たすと同時に、情報・知見として活用されることを期待する。

詳細はこちら(PDF 1.1MB)


会計報告

経 費 の 区 分

金額()

   調査員派遣旅費

886,281

   調査員人件費

762,000

   調査報告書作成費

65,297

   事業管理費

345,162

   現地調整員費

365,000

   現地補助員費

264,562

   報告書作成人件費

100,000

     

2,788,302

 

 

うち、補助金の額

1,310,136



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